楠高社の楠(巳神との会話)

久しぶりに不思議な話を書こう。例によって超能力女房が主役である。私たちは何に導かれようとしているのか。

住吉大社の裏から入る

住吉大社に着くと、いつものように境内の無料駐車場を目指した。ところが途中で警備員に呼び止められ、有料の方の駐車場へ誘導された。(実はこのこと自体が不思議の話への始まりだったかもしれない。)

おかしい、催事がない限りはいつも無料駐車場へ停めていたいのだが・・・

催事の有無は住吉大社入り口あたりの臨時案内板でわかるようになっている。しかしその日、特に催事の案内看板は出ていなかったのだ。

それでもとにかく警備員の誘導に従って有料駐車場へ移動した。その駐車場も境内にあり、これまでにも何度か駐車したことがあった。

車を降りた私は、そこでいつになく煙草を一服したくなった。女房と二人、駐車場脇に移動して境内の木々を眺めながらの一服。(実はここでの一服もおかしい。これは今まになかったことだ。)

早春のこの時期、木々は本格的な春に向かってエネルギーを蓄えている感じである。桜のつぼみ、薄緑の若芽の匂いがする。

そこで木々を眺めながら女房曰く・・・

「こっちの裏口から中に入ったことあったかなあ?・・」

確かに、ここ住吉大社には何度も参っているが、入ったことのない裏口があった。「裏口」というのは正門とは違った場所で、本殿エリアへ裏や脇から周り込めるようになっている入り口のことである。その駐車場は裏口へのアクセスに好都合であった。

本殿エリアの裏にはいわゆる末社(まっしゃ)がいくつかあるのを知っていたが、あまり重点的に回ったことはなかった。裏口から入ると本殿よりも先に末社が現れるという地理的な構造になっている。

末社:本社に付属する小さな神社。摂社に次ぐ格式をもつもの。枝宮(えだみや)。(三省堂 大辞林より)

「いやあ、こっちの裏口から入ったことは多分ないなあ・・・」

私は煙草を燻らしながらそう答えた。

おかしい・・・女房は裏口ルートに関して興味がありげである。何度も訪れている住吉大社で、女房がこれを気にしたことは一度もなかったのだ。

古池の老人

裏入り口をくぐるとすぐに古い池があった。そんなに大きな池ではない。そこにはじっとしているアオサギと、何羽かのカモがいた。

「あれ?こんな池があったっけ?」

これに関しては夫婦共々に首を傾げた。境内はかなり歩いて回ったつもりであったが、この池の存在に関しては知らなかったのだ。

周囲の石組みなどからしてかなり古い池である。どんより濁った水だが、アオサギがいるところを見ると何か魚がいるのであろう。カモもいるので水生植物もあるはずだ。

その池は真ん中を割るように幅の広い橋が架けられており、それを渡って奥へ進めるようになっていた。

ふと見ると、その橋の上に池を眺める一人の老人が立っていた。ハンチングを被った、この近所に住んでいる人の風態であった。その老人は私たちに気づくとおもむろに話しかけてきた。

「ヘビは見はった?ヘビ・・・」
「へえ、ここにはヘビがいますか?」と私。
「そうそう、大きなアオダイショウがおりまっせ」
「そうですか、へえ・・」

そんな他愛ない、挨拶のような会話を交わしながら橋を渡り、私たちは境内を奥へと向かった。

こんな小さな池に大きなアオダイショウがいるだろうか?古い石組みの隙間に生息しているのだろうか?そんなことを女房と話しながら歩みを進める。そこから先、大小の木々があってちょっとした林のようになっている。

初辰まいり

楠高社(なんこうしゃ)の楠(くすのき)

池にかかった橋を渡ってしばらく歩くと、見事な大木に育った楠に出くわす。それも一本でなく複数。「初辰まいり」を宣伝する、おびただしい数の赤い「幟」(のぼり)の中にそれらの楠があった。

そのうちのひとつが「夫婦楠」(幹周/7.9m、樹高/19.5m)それに「千年楠」(幹周/9.8m、樹高/18.5m)と、楠高社(なんこうしゃ)にあるところの、これもそこそこに大きい楠(幹周/5.8m、樹高/12m)。それぞれが御神木となっており、楠の幹にはしめ縄、そして周囲に柵がめぐらしてある。

これらの楠を眺めながら歩き進み、そして女房の足が止まったのは楠高社の楠である。

「楠高社の楠」の脇にある立て看板によると、この木は「巳神が宿る大楠の祠」とある。いわゆる「ヘビ神さん」、「巳神」(みじん)に関しては看板では「みいさん」とルビが振られていた。蛇が祀られている木、これは古い神社では珍しくなく散見される。

巳神の説明

さて、女房はこの楠の前で立ち止まり、じっと見つめている。私が歩みを進めようにも女房はそこで動かなくなっていた。

(ううむ、これは何か始まったに違いない)

しばらくして、多分1分程度か、女房がおもむろにしゃがみこみ、足元にあった根っこ、楠の根っこに触っている。

その巳神の大楠は柵で閉じられて幹に近づくことはできなかったが、地下の根っこは柵の下に潜り込んで手前にはい出しているようだ。その根っこの一部が盛り上がって土を突き破り、地表に露出している部分があった。根っこの露出部分の長さは約50cm程度。それはうねうねとしていて女房はその突起した部分に触れている。そして曰く・・・

「ほら、ここに触ってみ。ここだけ他より暖かいよ」

女房がそう言うので私もしゃがみ込み、そこに触ってみた。根っこの露出部分50cmの中で、女房が指している突起部分だけが確かに暖かいのがわかった。

「へえ、本当だ・・・なんでだ?」
「さあ?」と女房。さらに・・

「さて、じゃあ社務所へ行って御朱印帳を買ってこよう」と女房。

朱印帳:寺社仏閣を訪れたときにその証として押印と墨書き。由来は様々な様子。

女房はすでに朱印帳を持ってはいたが、そのページを使い果たしたので新しいものが必要だと言う。

楠高社の楠

巳神との会話

この楠高社の楠を後にして本殿エリアへ向かう。本殿の参拝が終わったら社務所で朱印帳を求めようという順路である。

本殿は第一本宮から第四本宮までの四ヶ所に分かれており、これら第一から第四までを順番にお参りするのが通例である。

その道すがら、女房に先ほどの「楠高社の楠」でのことを尋ねてみた。もしかしたらもしかすると思ったのだ。

「さっきの大きな楠のところでなあ、何があった?」

以下が女房の不思議な話である。

女房があの楠に近寄って眺めると、楠が語りかけてきたそうな。

女房曰く、楠が「私に触ってみろ」という。ところが、楠の周りには柵があるため「残念ですが柵があって入れません」と答えたそうな。すると楠曰く・・

「いやいや、足元を見てみろ、そこに触れ」と楠。

女房が自分の足元を見ると、楠の根が地中で柵を越えて張り出している部分があり、それが地上に露出している。そこに触れということと理解した。

そして女房はおもむろにしゃがみ込み、言われるがままに根っこに触ってみたそうな。さらに楠曰く・・・

「願いは何だ?」

女房はとにかく、とりあえず願いを並べてみた。

「聞き届けた」と楠。

「ありがとうございます」さらに女房は続ける・・

「ところで楠さん、せっかくの繋がりをいただきましたので、何か印(しるし)を持ち帰ろうと思います。お守りを求めるのはどうでしょう?」

女房はこの種のコミュニケーションが起こったとき、依り代(よりしろ)になる何かを務めて持ち帰るのが通例である。それがあると、時空を超えるコミュニケーションが取りやすいという。

楠がそれに答えて曰く・・

「いや、いらん・・・」

「じゃあ、こちらの古木から作られたという、お札もあるようですが、そちらはどうでしょう?」と女房。

楠答えて・・

「ああ、それもいらんいらん」

「それではせめて御朱印をいただいて帰りましょう」と女房。
「それでよかろう・・」と楠。

以上が「楠高社の楠」と女房との会話である。

普通、こんなことはあり得ないと思えるだろうが、女房にとってはたまにあることで、これをたいそう驚くことには値しない。もう普通のことである。

今回の話では巳神が女房の願いを聞いてくれたということになるのだが、その願いが実現するかどうかは全くの別問題である。このことは私達の体験上でよくわかっている。

また、ときによってはもっと直接的なアドバイスをもらうこともある。こちらの場合は何か切羽詰まった状況において出現する。しかしこれに関しては女房が自分で考えた結論を神々の言葉という形をとって語っているだけなのか、または実際に外からのコミュニケーションによってなされていることなのか、それは定かではない。

それから、私たちは自分たちのことのためでなく「彼ら」の願いを叶えるために動き回ることもあった。神々から頼みごとをされるというわけである。

「なんで俺たちがこんなことを!」ということもしばしである。どうやら神様たちは、この世では自分で手を下せない種類のこともあり、それは「人」に頼むしかないようなのだ。

これに関してはまた機会を改めて書こうと思う。

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「ところであのヘビ神さんの楠には蛇がいたか?」

女房に尋ねてみた。

「いやあ、ヘビの実態はもうなくて楠と一体化している感じ」
「幹のところにウネウネと巻きついている感じはあるけれど」

と、女房の答え。

「へえ、そうなのか」

今回の参拝では入り口のところで裏に回るように車を誘導され、そして裏口を入ると池のところで「老人」に「蛇を見たか」と言われた。どうも巳神の楠のところに導かれたとしか思えない。

女房曰く、神様は時折、老人の姿を借りて私達に語りかけてくることがあるという。ま、しかし池にいた老人はあまりにも普通に近所の老人。神様が化けているというよりも、憑依して語らせたというところだろうか。

そんなことを話しながら早春の住吉大社を後にした。

コメント

  • 吉祥殿の駐車場

    無料駐車場は多分北側の住吉駅のそばでNTTの裏だと思いますが、神社の催事だけではなく、結婚式とかがあると使えなかったはずです。
    南側の有料駐車場からは太鼓橋を北に見ながら南西の第四本宮に繋がる門から参拝できるのですが、記事に基づくと、御田を右手に武道館前から摂社の池にたどり着かれた様ですね。
    初辰さんで裏の神社は有名です。
    子供の頃に住んでいたので懐かしい記事でした。


  • Re: 吉祥殿の駐車場

    >>1
    こんにちはならおうさん。

    >御田を右手に武道館前から摂社の池にたどり着かれた

    まさにこのルートです。

    最近、種貸社は建物が完全に新しくなりました。
    楠珺社の宮司さんは実は英語がペラペラで外国人への案内も十分。



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